トレードカリキュラム5回目は投資の王道中の王道とも言える手法、ブレイクアウトです。
相場はトレンド相場とレンジ相場に分かれており、レンジ相場からトレンド相場に変化するときに
今回のブレイクアウト手法が使われます。
しかし、ここ10年余りは通信技術とテクノロジー、AIなどが発達し、資金量も桁違いです。
昔のような綺麗なチャートではなくなってしまったため、
ブレイクアウト手法が有効な状況に変化が出てきました。
ですが、相場は常に買いと売りしか存在せず、大きな流れについていく動きは変わっていません。
今回はブレイクアウト手法が有効に使えるように、これまでの経験をもとに解説していきます。
ブレイクアウト手法とは何か(ブレイクアウト手法ver.1)

ブレイクアウトは主要な目立つ高値と安値に水平ラインを引き、
その価格を超えていくタイミングでポジションを取っていくことです。
上チャート図がブレイクアウト手法ver.1です。(一般的なブレイクアウト手法)

しかし上チャート図のように目立つ高値や安値を超えても戻ってきてしまうことも多いです。
高値付近、安値付近では超えたタイミングでポジションを作ってくる動きを狙って
逆張りでスキャルピングしてくる大口投資家、投機筋がいるために起こります。
この動きが冒頭に記したブレイクアウトが上手くいかない要因です。
これを防ぐには相場を斜めの視線で見ることが大事になってきます。
こちらは後述していきますので、このままじっくりと読み進めていただけたらと思います。
タートルズ手法とはどのようなものか
ブレイクアウトをベースにした手法で有名なのはタートルズという集団です。
「優れた投資家は育成できるのか」を賭けにしたリチャード・デニスとウィリアム・エックハートによる
1983年に開始したトレーダー育成プログラムのことです。
13人の選ばれた一般人(プロギャンブラー、主婦、トレード未経験者など)に
取引手法を学ばせて、主に先物市場を中心に100万ドルを運用させた実験です。
ブレイクアウト手法のためトレンドフォロー戦略で運用しています。
結果的には「平均して年間80%の複利リターンを達成。4年間で1億7500万ドル以上の利益を上げた」とされています。
この結果から、優れた投資家は育成できるという結論なりましたが
13人全員が優れた投資家にすることはできませんでした。
タートルズ詳細
タートルズの育成プログラムは以下になります。
- 通貨、債券、国債、原油などの市場でトレードに必要な知識を学ぶ
- 少額でのトレード練習をする
- 少額口座で利益を得た人のみ100万ドル口座で運用する機会を与える
育成プログラムで一番利益を上げたのはカーティス・フェイスという19歳の青年です。
200万ドルの運用を任され、わずか4年で3000万ドル以上を稼ぎ出しました。
後に「伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術」という本を出版しました。
タートルズの育成プログラムで利益を出せなかった人の共通点
- 実際のトレードで失敗を恐れた
- 保守的なトレードスタイルを選択した
- 相場変動が激しくリスクが高いと考えていた
- 期限まで数日しかない相場では、収益を得られないと考えていた
教えられたルール通りにやらなかったことが原因であり
この結果からもルールを守れば利益があげられたのに、そうしなかったことから
ルールを守ることの重要性がわかります。
タートルズの手法
<プログラムの取引銘柄>
為替(FX)、国債、コモディティ、S&P500
<戦略>
トレンドフォロー
<エントリールール>
過去20日間の最高値をブレイクしたら買う
過去20日間の最安値をブレイクしたら売る
過去55日間の高値と安値をブレイクアウトしたらエントリー
<増し玉のルール>
エントリー後、20日ATRの1/2倍分順行したタイミング
初回エントリーと同ポジション量(常時)
20日ATRの1/2倍順行する毎に増し玉をする
<決済ルール>
買いエントリー決済:過去10日間の安値を更新
売りエントリー決済:過去20日間の高値を更新
<資金管理>
・最大損失額のルール
1日の最大損失額は投資資金の2%までにする
1回の取引でポートフォリオの損失額を最大1%にとどめる
・ポジションサイズのルール
資金を10等分して各商品に分散投資する
取引銘柄のボラティリティ(変動)に応じてポジション量を調整
・利益確定のルール
利益目標はなし
決済ルールで利益確定する
・損切りのルール
ATRの2倍(2ATR)に設定する
決済ルールの項目
事例(エントリー)

過去20日間をわかりやすくするために遅行線(-20期間)を表示させています。
高値は151.908、安値は147.150です。
このどちらかを抜けたタイミングでエントリーします。
逆指値注文(新規)で発注するか成行でエントリーします。
IFO注文(イフダンオーシーオー注文)でストップも同時に注文を出しておきましょう。
ATRでストップを出す場合は1.086(108.6pips)の2倍の217.2pipsが目安です。
事例(決済)

今回は売りエントリーが入りました。
決済はルールによれば過去20日間の高値を更新したら損切り、
または217.2pipsで損切りするため、147.228+2.172=149.400で損切りします。

過去20日間の高値を更新したので決済されました。(青点線)
今回は損切りとなってしまいました。
途中680pipsほどの含み益になっていたので、もったいないように思えますが
ルール通りにやるならこのやり方になります。
タートルズ手法は現在でも有効か
一部のサイトでは現代の相場では通じなくなっていると書かれていたりしますが
実際にそうでしょうか?
そういう場面も増えてきているでしょうが、きちんと使える場面はあります。
値動きの背景にある動きは複雑さは増していますが、本質的な部分は変わっていません。
約40年前の相場でも同じような場面でブレイクアウトは失敗しているケースは同じと思われます。
正確なことは知るよしもありませんが、大きな資金を動かす人はポジションを潰しあったり
同じポジションを重ねたりすることは、昔からとある情報網を使って行っていた話も実在するため
この点は今も変わっていないと思います。(法律的にグレーな部分が存在している限り)
しかし不確実性と複雑な動きは増しているので、微妙な値動きのチョッピーさで
ブレイクアウトが失敗しないようにする必要性があります。
それが次の項目です。
斜めの視点から見るブレイクアウトもある(ブレイクアウト手法ver.2)
チャートは縦軸の価格の動き、横軸の時間の動きがあります。
価格の動きが短期間に急激に動けば縦の動きが強まります。
価格の動きが緩慢な時は時間がかかるため横の動きが強まります。(価格変動を起こしながら)
このことから言えることは、短期間に価格の動きが強まればブレイクアウトが成功しやすい。
価格の動きが鈍ければブレイクアウトが失敗しやすいことになります。
描画ツールの水平ラインは価格の動きしか表すことができません。
そのためトレンドラインやチャネルラインを使い、斜めの動きを表すラインが必要になります。
しかし斜めのラインは人によって引く角度が異なることや
引くポイントが違うと角度が大きく変わってしまうため、とても難しくなります。
そこで、以下の条件を作ります。
- ラインは常にヒゲ先(ローソク足の高値安値)でとる
- 直近の最高値や最安値付近で意識される角度でラインをとる
この2つのポイントをベースにラインを引きます。
ここでさらにポイントなのは、赤太文字で示した部分です。
最高値最安値ではなく、「付近」なのが重要です。
相場は角度が大事だと経験から知っているので、角度が最高値最安値で取れる時もあれば
その付近で取れる時もあるということを知っておいてください。
これらを使った斜めのトレンドラインでブレイクアウトを狙うことをブレイクアウト手法ver.2です。
角度をとるトレンドラインの引き方
- 最高値、最安値どちらかで適当にラインを引き、
起点と終点以外にもう一点跳ね返っているところを探す
🔻 - その角度をコピペする(チャネルラインで引いた場合は省略)
🔻 - 最安値でラインを取ったら、過去の直近最高値
最高値でラインを取ったら、過去の直近最安値に合わせる
🔻 - この幅が値幅になる
🔻 - 1で取ったラインを直近の高値に当てる(下向きのラインの場合)
1で取ったラインを直近の安値に当てる(上向きのラインの場合)
これが基本です。
余談ですが、トレンド転換後にできる逆方向の角度のラインは、
上昇トレンドなら途中の高値、下降トレンドなら途中の安値にすでに現れています。
余裕があれば頭の片隅に入れておいてください。(まれに逆の場合があるため注意)

上チャート図にラインを引くと以下のようになります。

直近最高値で下向きのラインの角度を取って、
そこから過去の左側で一番最初に目につく安値に同じ角度のラインを当てます。
※ここではチャネルラインを使っています
その角度で主要な高値や安値にラインを当ててサポートされる可能性のあるラインとして
目安で引いておくとブレイクアウト以外でも役に立ちます。
この場合では下落時の目安です。

なお下にはみ出た部分(オレンジ)は、上に同じようにはみ出ました。
このことからこの角度のラインは信頼度の高い角度であることがわかりました。
なお、下落を狙うときは逆向きの右上がりラインを直近高値で取っておきます。

右上がりのラインはこのように引け、暫定的にこの時点では直近安値(148.841)においておきます。
このラインを抜ける時は148.841を抜ける時なので
もし抜けてきたら右下がりのラインで一番最初に当たる部分が決済候補になります。
しかしこのライン前後の幅で止まる可能性があることを意識しておくようにします。
2つの角度のラインでブレイクポイント後のブレを推測する

上チャート図は直近の高値に角度の違うラインを加えたものです。
黄色の三角部分は価格のブレが起きるであろう可能性を示したものです。
もし水平ラインだけで考えた場合、この高値をブレイクしても上昇が途中で終わる可能性が
高いと推測できます。
この黄色三角をしっかり超えたタイミングが上昇しやすい環境になってくると
この時点で予測の目処が立ちます。
※この例ではその上に右下がりのラインがあるためこのラインで上昇を抑えられる可能性あり
このようにブレイクアウト後のブレを予測することが
斜めのブレイクアウト(ブレイクアウト手法ver.2)にメリットのため
初心者には難しいと思いますが、中級者以上でもうワンランク技術を高めたい方は
覚えておいて損はありません。
まとめ
ここまでいかがでしたでしょうか?
最後は難しい方法ですし、角度の取り方を間違えると見方も変わってしまうため
とても練習が必要ですがトレードテクニックを高めたいならばメリットの方が大きいです。
ブレイクアウトver.2にタートルズの手法を加えて、両方の角度を超えていく場面で
ブレイクを狙う方法も考えることができます。
過去の先人が残した有効なトレード手法をブラッシュアップして使うことで
成績が上がることがあります。
たかがブレイクアウト手法と侮らず、研究していく姿勢が新しい視点を与えてくれるでしょう。
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